小原 薫
25春闘の闘いと課題
25春闘は昨年を超える大幅な賃上げが期待されていた。連合は5%以上(定昇込)で中小6%以上を目標に掲げ、全労連・国民春闘は月三二〇〇〇円、10%以上、時給二〇〇円以上を掲げて、全労協は、非正規雇用労働者の賃金引き上げと最低賃金全国一律一五〇〇円以上、誰でもどこでも月額二五万円以上の賃金となる事を求めて春闘に入った。
結果は、三月一二日の回答指定日には自動車、電機、鉄鋼など大手等が一二〇〇〇円~一八〇〇〇円前後の額の回答を行った。中には満額回答や要求なしの回答額のみの回答もあった。厚生労働省の調査によれば、資本金一〇億円以上かつ従業員一〇〇〇人以上の労働組合のある企業三九〇社の平均妥結額は一八六二九円で、前年(一七四一五円)に比べ一二一四円の増。また、現行ベース(交渉前の平均賃金)に対する賃上げ率は5・52%で、前年(5・33%)に比べ0・19ポイントの増と賃上げ額、賃上げ率はともに昨年を上回った。
連合の中間総括では二年連続して5%台の賃上げを実現し、中小労組でも4・93%の賃金水準を確保したと公表した。
全労連や純中立労組懇などで構成する国民春闘共闘委員会は六月一八日春闘の中間総括を確認した。六月五日時点の賃上げ集計では、回答引き出し組合の単純平均が八七三九円、3・26%。中間総括は、「労働者の高まる要求を背景に、昨年三〇年ぶりにつくり出した高い賃上げ水準を維持する結果」と評価する一方で、「実際の生活の改善にはつながっていない」などと指摘。とりわけ、ケア労働者の賃上げ回答が伸び悩んでいることを課題にあげている。
全労協は、大企業と中小企業の格差は拡大している。平均賃上げ率は5・4%だったが、働き手は賃上げを実感しているのか不透明な状況だ。民間の調査機関の中には5%以上の賃上げを受けた人は7・2%にとどまり、「変わらない」が半数近くを占めているとの調査結果を示しているところもあった、と総括した。中小零細、個人加盟のユニオンが多い等との実感や、米価格を始めとする物価の高騰に賃上げが追い付いていない現実の中で、全労協も加盟する「最低賃金引き上げキャンペーン」を闘い、賃金の底上げを目指して最低賃金上昇に向けた取り組みを強化した。
最低賃金引き上げの闘い
二〇二五年七月二二日、厚生労働省の中央最低賃金審議会において、今年度の最低賃金改定をめぐる議論が本格化した。その背景には、厚生労働省等の調査によれば今や全国で七〇〇万人が最低賃金水準で働いている。特に中小・零細企業では、五人に一人以上が最低賃金近傍の時給で働くとされており、この一〇年でその割合は三倍以上に増えている。米価は前年の二倍、食品全体で7・2%上昇。最低賃金近くで働く労働者の32%が「暮らしは苦しくなった」と答えている。一方、二〇二〇年代に平均時給一五〇〇円という政府目標を達成するには、毎年7・3%の引き上げが必要だが、現実はこれにすら追い付いていない。こうした中で、急速な最低賃金の引き上げは、「暮らしを守る」ためには必要であると闘いが開始された。
五月には最賃引き上げに向けた相談会を持ち、全労連・国民春闘、最賃キャンペーン、全労協・けんり春闘の三者構成で最賃共闘相談会を立ち上げた。また、全労協は、六月二七日「二〇二五年最低賃金改定に関する要請書」を厚労省に提出し、全国一律にいますぐ一五〇〇円に引き上げることなどを要請した。最低賃金の引き上げは中小零細企業の労働者や非正規雇用労働者にとって直接的に影響する。全国一般全国協は昨年に続き最低賃金の大幅な引き上げを求める全国署名を取り組み、年に一回ではなく二回の引き上げが必要だということも訴えてきた。七月一日には最賃共同アクションの記者会見を行い、同日、夕方から新宿でのスタンディングを取り組み、最賃大幅引き上げのアピールを行った。七月一一日から審議が始まった目安小委員会日程に合わせて厚労省や審議会場前でアピール行動を行った。
中央最低賃金審議会は、七月二二日以降八月四日まで四四年ぶりと言われる七回の審議を経て、全国加重平均で六三円増とする目安が発表された。全国をAランク、Bランク(共に六三円増)、Cランク(六四円増)とされ、初めて最低賃金が低いCランクが高くなった。しかし、これでも地域間格差は埋まらない。また、食料の消費者物価指数は、前年比6・4%、米などの一カ月に一回程度購入する品目の伸び率が6・7%になっているのが現実だ。これでは「健康で文化的な最低限度の生活」すらままならない。

地方最低賃金審議会における闘い
こうした中で、地方最低賃金審議会における闘いが強化された。二四年度最高の東京(一一六三円)と最低の秋田(九五一円)の差は時給で二一二円、月に直すと少なくとも三万円以上の違いになる。これが、若者が地方から流出する大きな理由にもなっている。
全国一律化を求めながら、地域における実情を訴える審議会での意見陳述や傍聴闘争、駅頭や県境等での宣伝行動などが取り組まれた。とりわけ、今年は福岡の審議会で、全国一般全国脇・ユニオン北九州の外国人技能実習生が意見陳述をした。介護事業所で働く技能実習生は、「二交代制で八時間から一〇時間働いているが、時給は九九二円。ある月の給料は、夜勤手当や残業手当等各種手当を入れても総額二五万円程度で、税金などを控除した手取りは二二万円だったが、残業が少ない時は手取りが一五~一六万円であること。この中から、本国に送金し、実際に使えるお金は、四万円~五万円ほどだ」と陳述した。このような生活で、ほぼ最低賃金で働かされているのが全国的実態である。おりしも差別排外主義集団が「日本の賃金が低いのは、外国人のせいだ」という差別キャンぺーンが吹き荒れる中で、「福岡県の最低賃金九九二円で働いていますが、同僚の日本人はこの最低賃金で働いている人はいません。最低賃金が一五〇〇円になれば、母国に送金しても一〇万円以上残ります。是非最低賃金の大幅な引き上げを」と訴えた意見陳述は、多くの労働者市民の共感を生んだ。政府や使用者、資本家に求められているのは、誰もが生活できる最低賃金の大幅引き上げと全国一律化である。
このような闘いを経て、全国各地の審議会の結果出された、二五年の最低賃金が九月五日に公表された。多くのところで「目安」を上回っているが、ここで問題となる点がある。
例年この最低賃金は、一〇月一日前後から適用されるが、今年は秋田県の二六年三月三一日からが最も遅く、図にあるように二三道府県で適用が遅らされている。秋田県では、一〇三一円と前年から八〇円のアップであるが、実質六か月間の遅れでは、一〇月改定であれば得られていたはずの、月一六〇時間×八〇円×六か月=七六八〇〇円が得られなくなる。実質四〇円アップでしかなくなり、中央最賃の目安値をも大幅に下回るのだ。このような事を許すことはできない。使用者側に配慮した結果であると言われているが、事業者の支払い能力を、最賃目安引き下げの口実にしてはならない。
誰でもどこでも生活できる賃金を目指して、「全国一律最賃を阻むA~Cランク制撤廃」「消費者物価上昇は、『頻繁に購入する品目』指数で見る」「年一回の最賃改定では急激な物価上昇に追いつかない。年二回の改定」を目指して闘おう!
