『戦旗』第1686号(11月1日)3面
本年二月、石破自公政権の下で、第七次エネルギー基本計画が閣議決定された。GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)を柱として産業構造の転換をする上で、原子力の利用をこれまで以上に拡大しようとするものだ。福島第一原発の事故は未だに終わっていない。そもそも、福島の事故が起こらなかったとしても、廃炉後の放射性廃棄物をどうするのかさえ決定していない中で、原発の新増設(建て替え)をも推し進めようとする暴挙を絶対に許してはならない。第七次エネルギー基本計画に先立ち、岸田政権になって原発回帰が加速した。二三年二月のGX基本方針でまず次世代革新炉への建て替え容認に転換している。二五年二月第七次エネルギー基本計画では同じ電力会社が別の原発敷地内に建てる場合も廃炉分の建て替えとみなす要件緩和に踏み込んだ。
第六次エネルギー基本計画では、可能な限り原発依存を低減することとされていたが、第七次エネルギー基本計画は、原発の抑制から最大限の活用へと政策が転換された。これまでにも見られた福島の教訓を活かすという文言は見えるものの、再び事故が起こったらどうするのかといった根本的な所には全く触れられていない。
世界的に原発回帰が進んでいると言われている。しかし、放射性廃棄物の最終処分方法は確立していない。気候変動という解決困難な事案に対応するために、放射能という別の解決困難な事案を持ちだしてくるという無責任な行為は、将来世代に対する嫌がらせ以外のなにものでもない。
1 GX、DXを柱とした産業構造の転換と原発推進
第七次エネルギー基本計画では原子力について、「準国産エネルギー源として優れた安定供給性と技術自給率を有する自律性が高い電源であり、他の電源と遜色のないコスト水準で変動が少ない」と評価している。
第七次エネルギー基本計画で語られていることは、GXとDXを柱とした産業構造の転換を図ることであり、そのために原発を脱炭素エネルギーとして活用することである。
今後日本の人口は減少するにもかかわらず、生成AIの普及に伴い、データセンターや半導体工場の運用に伴う電力需要増加に対応するために原発が必要だとしている。九月一二日、日本政府は人工知能(AI)戦略本部の初会合を開いて、国内のAI開発を後押しする方針を示した。AIは産業競争力や安全保障に欠かせない技術であるとされている。経済産業省の推計では、海外のデジタルサービス利用に伴う日本の赤字(デジタル赤字)が三〇年度には原油輸入額をこえる約一〇兆円になるとしている。AI開発の波に乗り遅れると大変な損をすると宣伝し危機をあおっている。
産業構造の転換を打ち出してみせることで、経済成長のために原発の稼働率上昇はやむを得ないという空気を作り出そうとしているかのようだ。
第七次エネルギー基本計画では、第六次エネルギー基本計画(二〇二一年一〇月)以降の状況の変化として、ロシアのウクライナ侵略や中東情勢の軍事的緊張の高まりにより、化石燃料の調達について不確実性とコストが増したとしている。また、今後、日本国内では人口が減るものの、DX、GXの進展に伴い、電力需要の増加が見込まれるとする。化石燃料に頼らない電源を脱炭素電源として、太陽光、水力、風力、地熱といった再生可能エネルギーと共に原子力を最大限活用することが重要だとしている。
GXを柱とした産業転換とは何かと言えば、化石燃料の使用量を引き下げることである。化石燃料からの脱却を産業転換の一つの柱とし、投資を増やそうとしている。現在、化石燃料を使って動かしている乗り物、産業機械などについては電化を進めるのである。加えて、地球の温暖化に伴い冷房の利用は増加する。デジタル分野では生成AIの利用が増えることに伴い、半導体の需要が増え、より大きなデータセンターが必要となる。半導体の生産、データセンターの運転には膨大な電力が必要とされる。そうした電力を安定的に供給するために、天候の影響を受けにくい電源として原子力が有用であるというのだ。第七次エネルギー基本計画では、脱炭素電源として太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーと並んで、原子力が挙げられている。そして、脱炭素電源を最大限活用するという口実で、発電量全体に占める原子力の割合が二〇四〇年度には約二割になるとの「見通し」を示している。第六次エネルギー基本計画では二〇三〇年度の発電量全体に占める原子力の割合が約二割になるとの「見通し」が示されていた。(エネルギー基本計画は「見通し」という言葉が多用されるため非常に読み難くなっている。ここで語られていることは、全発電量に占める原子力の割合を二割にすることを「目標」として原発を整備するというのではなく、今後、二割は必要になる「見通し」だから、対応できるように整備しなければならない、という理屈なのである)この「見通し」に対応するために、原発の運転期間の延長が認められることとなった。そもそも四〇年を期限として設計されている原発を最大で六〇年まで延長できるとした。そして、訴訟や検査などで停止していた期間はその六〇年の期限に加えないというのだ。第七次エネルギー基本計画では新規の設置について推し進めようとしている。これまでは、廃炉を決定した原発の敷地内での建て替えを認めるとしていたが、廃炉を行う電力会社であれば既存の原発敷地内に新たな炉を建設することを認めるとしたのだ。現在、関西電力の美浜原発、九州電力の川内原発での新しい炉の建設が計画されている。新しい炉は、「次世代革新炉」、「革新軽水炉」などと呼ばれているが、技術的に大きな変更がないということをメーカー自体が売りにしており、改良型に過ぎないのだ。
二〇四〇ビジョンでは脱炭素電源と産業の集積が盛り込まれている。産業構造転換の国内モデルとして宣伝されているのが九州、熊本県へのTSMC工場の誘致だ。現在稼働中の第一工場、建設中の第二工場合わせて三兆円が投資されており、日本政府も一兆円を投資している。「脱炭素電源と産業の集積」というビジョンの中に、川内原発の三号基増設も含まれている。
AI関連事業は全世界的なバブルといってよい。常識的に考えられる投資額を遙かに超えている。AI関連投資額が著しいのが米国である。
九月二二日、米半導体大手であるエヌビディアは米オープンAIに最大一千億ドル(約一五兆円)を投資すると発表した。オープンAIはこの資金を使って、巨大人工知能(AI)向けのデータセンターを作る計画だ。当然、エヌビディアの半導体が使われることとなる。今回の投資はエヌビディアが半導体企業からAIインフラ企業への転換を図って行ったものとされている。オープンAIにしても、エヌビディアの投資を呼び水にして、さらに多くの投資を得ようとしているのだ。そして、今回計画されているデータセンターの消費電力量は原発一〇基分にも相当するものと言われている。
翌九月二三日には、オープンAIとソフトバンクグループ、米IT大手のオラクルとが、データセンターを米国内五カ所に建設する計画を発表している。こちらは三年間で四千億ドル(約六〇兆円)の巨額の投資が行われると報じられている。
天文学的な投資額と驚くべき電力使用量予測。こうした数字を並べることで、デジタルとエネルギーとが成長産業であると印象づけると同時に、膨大な電力が今後も必要であると印象づけようとしている。
米国のトランプ政権は気候変動をデマとして扱っている。今後も化石燃料をどんどん使って、こうしたAI関連で生じる電力需要に対応しようとしていると言える。加えて、米国でも原子力への回帰が進んでいる。GXを抜きにしてDX一本で行こうという構想である。
第七次エネルギー基本計画では、電源の脱炭素化を進めるために、再生可能エネルギーについて、現在の二割程度から四~五割にするとも掲げられている。本来であればこちらこそGXの本来の目標であるはずなのだ。
何はともあれ、産業構造の転換に必要であるとして過大に見積もられた需要に合わせて、原発を増設するというのは、将来の世代に解決困難な事案を押しつけることに他ならない。このような悪意ある遺産(レガシー)を許してはならない。
2 上関町への中間貯蔵施設建設計画を白紙撤回に追い込もう
八月二九日、中国電力は上関町に計画している使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設について、「立地可能性調査」の結果を町に報告した。「中間貯蔵施設の立地の支障となる、技術的に対応できない問題はないとの評価にいたった」としている。
九月一一日には上関町議会において全員協議会が行われた。中国電力からは笹木伸一上関原子力発電所準備事務所長ら五名が参加。予定地を適地としたことについて説明を行った。
九月一八日、上関町議会において一般質問が行われている。
調査報告書については、中国電力のホームページにて確認することができる。調査の目的は「立地の支障となる技術的に対応できない問題の有無について、事業者として判断すること」である。地盤、気象、火山、津波、河川、地震、竜巻、社会環境、その他(文化財、動植物、景観等)の九項目について調査結果が報告されている。
地盤については、調査地点周辺に活断層等は発見されず、施設の基礎地盤となりうる堅硬な岩盤が存在することが確認されたとしている。予定地である長島周辺陸海域に活断層は確認されているが、耐震設計等で対応可能と評価している。しかし、活断層が直下になければ安心ということにはならないはずである。また、建設可能か否かの評価しか行っていないため、大きく山を切り崩す工事が周辺の海に及ぼす影響については全く評価されていない。東日本大震災の後、上関町では原発に頼らない町づくり、自然を活かした町づくりが取り組まれてきた。特に上関周辺の海域は「奇跡の海」とも評価されており、希少種のスナメリやカンムリウミスズメなどの生物が生息する他、豊かな漁場でもある。上関の豊かな海は長島の山に住む生物の営み、地下水の流れといったものが影響している。そうしたことを評価することなしに、建設の適否について判断することはできないはずである。
中国電力が上関町長に「立地可能」という報告を手渡した八月二九日、関西電力の水田副社長が福井県庁を訪ね、関西電力の原発から出た使用済み核燃料について、遅くとも二〇三五年末までに中間貯蔵施設への搬出を開始するとの方針を福井県に伝えた。中国電力と関西電力が同日に発表したことについて、関西電力の発表が上関町への中間貯蔵施設建設を当て込んだものではないかとの疑念が拡がっている。中国電力と関西電力は同日になったことは偶然であると説明している。
上関への中間貯蔵施設建設計画が立ち上がった当初から、建設の目的は関西電力の使用済み核燃料を持ち込むためだということが語られていた。中国電力自身が計画を打ち出した当初から、関西電力との共同開発であると語っていた。しかし、関西電力の使用済み核燃料を持ち込むために中間貯蔵施設を作ることについては、地元の反発が強く、中国電力はあまり触れられたくないようだ。
上関への中間貯蔵施設建設計画については、建設することが技術的には可能であるとされたに過ぎず、正式に決まったわけではない。にもかかわらず関西電力が二〇三五年末までに使用済み核燃料を中間貯蔵施設に移すと話したことが不誠実極まりないのである。現在、中間貯蔵施設は青森県のむつ市にあるのみである。その、むつ市の中間貯蔵施設への搬入については断られているので、現在具体的な搬出先はない。
そもそも「中間貯蔵」という位置づけ自体が本当かどうか怪しい。発電に使用した後の核燃料が放射性廃棄物として扱われていないのは、再処理をして、もう一度燃料として使うという、「核燃料サイクル」構想にしがみついているからに過ぎない。再処理施設は青森県の六ヶ所村で今なお建設中であり、何度も工期の延長を繰り返している。完成前から老朽化が進んでいる状況だ。再処理施設が完成したとしても、全ての使用済み核燃料を再処理する能力があるわけではない。最終的にはどういった処分を行うのかが何も決まっていないのだ。燃料を保管するキャスクという容器の使用限度は五〇年とされているが、五〇年以内に解決する保証は何もない。
最終処分をどうするのかということすら定まっていない中で、中国電力に五〇年の使用期限を保証させることなどどだい無理な話である。最終的には国が責任を持つのだという人もいる。しかしながら、国の約束など当てにならないというのが福島の教訓である。現に、福島原発においては、放射能汚染水をALPS処理水として、海洋放出してしまった。除染作業で回収した土についても「復興再生土」なるカテゴリーを作って、全国に拡散させようとしている。こうした処理について、政府や一部専門家らは「科学的に妥当だ、影響はない」などとしているが、どちらかといえば、このくらいの汚染は大目に見てもらわなければ破綻してしまう、という都合から、新たに基準を作ってしまったということに過ぎない。国際社会が認めているということも問題だ。今後同様の事故が起こった際には、今回の決定に準じて、歯止めがかからなくなってしまうことであろう。
ともあれ、核燃料サイクルの破綻は明らかであり、解決の方法すら見いだされていない。未来の世界に過大な負債を生み出している。今重要なことは、これ以上悲惨な状態にしないために原発を廃炉に取りかかることである。今秋期、上関への中間貯蔵施設建設計画、原発建設計画を撤回させる闘いに取り組もう。
上関への中間貯蔵施設建設計画が打ち出されて以降、周辺の市町の住民による中間貯蔵施設建設反対の取り組みが継続して闘われている。今年二月に行われた田布施町の町議会議員選挙では、中間貯蔵施設建設反対を掲げた候補者六名が全員当選し、議席の半数を占めた。三月一七日には中間貯蔵施設建設に反対する決議を県内で初めて可決させた。柳井市では八月一二日に中間貯蔵施設建設について、市議会に「反対の意思表明」を求める請願が行われている。この請願は九月の市議会で継続審議となり一二月議会以降に判断が行われることとなった。一二月には柳井市の市議会議員選挙が行われる。
周南市では、住民の会が説明会の開催を求める請願書を市議会に提出している。一〇月二六日、周南市において、小出裕章さんの講演会が行われた。
一一月一五日には上関町において反原発集会が取り組まれる。上関周辺には活断層が何本も走っている。このことは中国電力の調査でも確認されていることだ。こうした場所に原発や中間貯蔵施設を新たに作ることがいかに危険であるか。自然は人間の都合など顧みることはないのであるから。上関原発建設計画、中間貯蔵施設建設計画を白紙撤回に追い込む闘いに全力で取り組もう。
